「メタバース不登校支援を自分たちの現場で始めたい。でも、ゼロから設計するのは不安…」
学校・自治体・NPOの方から、よくいただく声です。メタバースという言葉は広まっていても、具体的にどう設計すれば運用が続くのかのイメージが湧かない。何をどの順で用意すべきかも手探りになりがちです。
この記事では、日本におけるオンライン支援の代表的な先行事例である認定NPO法人カタリバの「room-K」の設計思想を整理し、その考え方を自分たちの現場で再現するためにZEPをどう活用できるかを設計図の形でまとめます。「先行事例から学び、自分たちに合う形に落とし込む」ための、実務ガイドです。

room-Kとは何か – カタリバが運営するメタバース不登校支援
room-Kは、認定NPO法人カタリバが運営する、小中学生向けのオンライン不登校支援プログラムです。公開情報によると、2022年に埼玉県戸田市教育委員会との連携からスタートし、以降、全国の複数の自治体・学校とも連携を広げてきました。
room-Kの特徴は、単なるオンライン授業ではなく「子どもの居場所」としてメタバース空間を設計していることにあります。学校に行きづらい子がアバターで参加し、学習・探究・対話・保護者との面談まで、ひとつの空間で幅広い体験ができる仕組みです。
メタバース不登校支援の文脈では、最も参照される国内事例のひとつ。先行事例として公開されているレポートや活動報告からは、継続的に運用を回すための設計思想を読み取ることができます。
room-Kの設計から読み取れる5つの核心ポイント

公開されているレポートや活動報告を整理すると、room-Kの設計には再現価値の高い5つの核心ポイントが見えてきます。
① 「授業配信」ではなく「居場所」として設計する
room-Kがまず大切にしているのは、「そこに居てもいい」という感覚です。勉強させるための場でも、登校復帰を促すための場でもなく、アバターで入ってきた子がそのまま過ごせる空間という位置づけ。だからこそ、学習以外の時間・対話・雑談・何もしない時間が肯定されています。
② 常駐スタッフ(メンター)が存在する
子どもだけが集まる空間ではなく、平日日中に大人のスタッフが常駐しているのがroom-Kの骨格です。学習のサポートをしたり、雑談相手になったり、調子が悪い日は静かに見守ったりと、大人の存在が「安全な場所」の根拠になっています。
③ 学習・探究・表現の多様なメニュー
教科学習だけでなく、探究活動・アート・ものづくり・対話プログラムなど、子どもの興味関心に合わせた多様なメニューが用意されています。「勉強しないと認められない」ではなく、興味が動いたところから参加できる設計が、長く続く理由のひとつです。
④ 保護者支援を運用の中に組み込む
子ども向けのプログラムだけではなく、保護者向けの面談・ピアミーティング・情報提供が運用の中に組み込まれています。家族全体を支える視点が、活動を一時的なイベントではなく生活に根付く支えに変えています。
⑤ 在籍校との連携フロー
在籍校との情報共有・出席認定の相談・学習記録の提供など、学校現場と連動する仕組みが整備されています。メタバース不登校支援が「学校の外にある別物」ではなく、在籍校と並走する支援として機能する設計です。
ZEPで同じ考え方を再現する活用設計図
ここからが本題です。room-Kの設計思想を、自分たちの現場で再現したい場合に、ZEPというプラットフォームでどこまで近づけるかを設計図の形でまとめます。規模やリソースに関わらず、ZEPの機能群は、同じ考え方を柔軟に実装できる柔軟さを持っています。
ポイント①「居場所」→ ZEPの空間カスタマイズ

オブジェクトを自由に配置できるZEPでは、学校っぽさを意図的に減らした「居場所らしい空間」を作り込めます。机と黒板ではなく、ソファ・観葉植物・窓・カフェコーナーのような配置にすると、入ってきた子がほっとできる雰囲気が生まれます。room-Kが大事にする「そこにいていい感じ」を、空間デザインで表現するアプローチです。
ポイント②「常駐スタッフ」→ ZEPの運用体制設計
ZEPのスペース自体には常駐機能はありませんが、運用側が時間を決めて常駐する体制を組むことで再現できます。例えば「平日の10時から14時は担当スタッフがアバターで在室」とルール化し、子どもはその時間帯にいつでも立ち寄れる、という設計。担当者を明確に決めておくことが、運用を安定させる土台です。
ポイント③「多様なメニュー」→ ZEPのミニゲーム・クイズ・動画埋め込み

ZEPにはミニゲーム、クイズ機能(ZEPQUIZ)、YouTube埋め込みなど、多様な活動メニューを空間内に配置できる機能が揃っています。学習コーナー・アートコーナー・ゲームコーナーなどをエリア分けして、興味のあるところから参加できる構造を空間に持たせましょう。room-Kの多様メニューのエッセンスを、ZEPの標準機能で十分再現できます。
ポイント④「保護者支援」→ ZEPのプライベートエリア

ZEPのプライベートエリアは、その中にいる人だけで音声・チャットが閉じる機能。保護者面談・保護者ピアミーティング専用のエリアを空間の一角に設けることで、子ども向けと保護者向けの両方を同じスペースで運用できます。入口から動線を分けておけば、子どもが保護者面談の会話に触れることもありません。
ポイント⑤「在籍校との連携」→ ZEPの入退室ログ
ZEPは入退室ログが標準で取れます。このログを在籍校と共有できる形式で整理しておくことで、出席認定の根拠資料や、学校側へのフィードバック資料として活用できます。文部科学省のガイドラインに沿った運用を意識すれば、取り組みと在籍校の連携がスムーズになります。
自分たちに合う形に調整するときの3つのヒント
具体的な運用ステップはZEP不登校支援を始める5ステップ、空間づくりの実務はZEPメタバース教室の作り方も参考になります。room-Kの設計図をそのままコピーするのではなく、自分たちの規模・リソース・地域の文脈に合わせて調整することが、長続きの鍵です。3つの調整ヒントを紹介します。
ヒント①:まずは時間帯を絞る
いきなり平日全日開室は負担が大きすぎます。週2回×90分、週1回×60分など、小さな時間枠から。参加する子・スタッフ双方の負荷を見ながら、少しずつ時間を広げていくのが現実的です。
ヒント②:メニューは3つから始める
「学習・雑談・ゲーム」の3つに絞ってメニューを開始するのがおすすめ。room-Kのように充実したメニューに最初から揃えようとすると、準備で疲弊します。3つの柱を安定運用できた段階で、4つ目を足すペースで十分です。
ヒント③:連携先を1箇所から作る
在籍校・自治体・NPO・保護者会など、連携相手は1箇所から始めましょう。最初に「一緒に試してくれる味方」を1人作ることが、メタバース不登校支援を地域に根付かせる最初の種になります。
先行事例に学ぶときに気をつけたい3つのこと

最後に、先行事例を参考にするときに避けたい落とし穴を3つ挙げておきます。
① 規模感をそのまま真似しない
room-Kは全国規模のNPOが運営する大型プログラム。個人教師や小規模自治体がそのまま真似しようとすると、設計が重すぎて回りません。「考え方」を真似し、「規模」は自分たちに合わせるのが鉄則です。
② 「正解のひとつ」として位置づけない
先行事例はあくまでひとつの実践例。地域・子どもの層・学校文化が違えば、合う設計も変わります。room-Kの型をゴールに据えず、参考資料の位置づけで使いましょう。
③ プラットフォームと設計思想を切り離す
room-Kはroom-K独自の基盤で運営されています。ZEPで再現するときは、同じ考え方を別の道具で実装していると理解するのが正確。機能の違いは、逆にZEPの強み(ブラウザ動作・無料プラン・カスタマイズ自由度)を活かすチャンスになります。
まとめ – 先行事例から学び、自分たちの設計図を描く
メタバース不登校支援の先行事例としてのroom-Kは、設計思想の教科書として大きな価値があります。居場所としての設計・常駐スタッフ・多様メニュー・保護者支援・学校連携という5つの核心は、規模やプラットフォームを越えて普遍的に使える「続く運用の骨格」です。
一方で、同じ思想を実装するための道具の選択肢は一つではありません。ZEPのようなブラウザベースで、無料プランから始められ、オブジェクト配置の自由度が高いプラットフォームは、小規模に始めて段階的に広げたい現場にとって現実的な選択になります。先行事例から学び、自分たちの規模・文脈に合わせて独自の設計図を描く。それが、メタバース不登校支援を自分たちの地域に根付かせる最短の道です。
まずはZEPの無料プランで、室内のソファを一つ置くところから。その空間が、数ヶ月後には誰かの大切な居場所になっているかもしれません。